信州ブレイブウォリアーズによる企業共創へのチャレンジ スポーツの“つなぐ力”がパーソナルデータ流通の後押しに

信州ブレイブウォリアーズによる企業共創へのチャレンジ スポーツの“つなぐ力”がパーソナルデータ流通の後押しに

スポーツの新しいビジネスモデルの創出に企業共創で挑んでいる株式会社NAGANO SPIRIT。同社は、長野県長野市にホームタウンを置いているプロバスケットボールチーム・信州ブレイブウォリアーズを運営しています。現在、パーソナルデータの流通による新しい事業の可能性を探る共創プロジェクト事業共創プロジェクトを推進中です。取締役を務める渡辺智之さんは、インタビュー記事でスポーツに秘められた“つなぐ力”に寄せる期待と、目指している世界観について語っています。

2023年6月に開催された「BIPROGY FORUM 2023」で設けられたトークセッションでは、一連の取り組みについて渡辺さんに語っていただきました。プレゼンターを務めたBIPROGYの市原潤は、信州ブレイブウォリアーズが企業共創に取り組むきっかけを作ったNICOLLAPの一員でもあります。信州ブレイブウォリアーズの企業共創の“伴走者”を務めています。


目 次

企業共創の促進にスポーツの“つなぐ力”を。
日本の“バスケ熱”が上昇中。信州ブレイブウォリアーズの挑戦とは。
「応援」の気持ちが追い風に。パーソナルデータを「健幸」に生かす。
「本人同意」が広げる未来の可能性。データ連携の基盤構築で大切なこと。

渡辺 智之

(わたなべともゆき)

株式会社NAGANO SPIRIT 取締役

大学卒業後、食品会社の勤務。2005年から、会社勤務と同時並行で信州ブレイブウォリアーズの設立に参画。2011年にチームが設立された以降も、食品会社に勤務するかたわら、信州ブレイブウォリアーズのホームゲーム運営スタッフを担った後、2020年に同チームの運営会社に入社。2020年より現職。

市原 潤

(いちはらじゅん)
BIPROGY株式会社
戦略事業推進第二本部 事業推進第二部
企業共創プロジェクト1G

大学卒業後、大手通信会社の新サービス企画や、広告会社の新規事業開発に従事。その後、ベンチャー企業の地域プロデューサーを経て、2019年にBIPROGY入社。スポーツ庁地域版SOIP2022の地域ディレクターを務めたほか、一般社団法人長野ITコラボレーションプラットフォーム(通称:NICOLLAP)のディレクターとして、長野県での地元企業との事業共創による“かせぐまちづくり”に挑戦中。

このトークセッションでは、パーソナルデータの流通により生活者一人ひとりに最適化されたヘルスケアサービスを提供できる可能性と、生活者を巻き込んだコミュニティ形成によるスポンサーとプロチームの関係性の進化が語られました。その内容をもとに対談記事として再編集しました。データ連携が実現する未来像の一端をご覧ください。

企業共創の促進にスポーツの“つなぐ力”を。

市原

今日はたくさんの方にお集まりいただきました。B1リーグの試合をご覧になった方がたくさんいらっしゃるのでびっくりしました。B1リーグは全国にチームがありますからね。みなさまそれぞれにバスケットボールの楽しみ方があると思います。

一方、本日はビジネスの観点からプロバスケットボールについてお話をします。いかにして稼ぎながらプロスポーツのビジネスモデルを確立していくのか。企業共創の観点をふんだんにふまえて語らせていただきます。

渡辺さん

私は長野県長野市で生まれ育ちました。信州ブレイブウォリアーズがホームタウンを置いている町ですね。信州ブレイブウォリアーズには2005年の立ち上げから関わっています。当初の関わり方はボラティアでした。食品会社に勤めながら、プライベートの時間を使って5年間にわたりプロバスケチーム誕生を手伝っていました。その後、当時のプロバスケットボールリーグであるbjリーグ参入が2010年に決まってからは、会社勤務を続けながら、会場スタッフとして関わりました。社員として関わるようになったのは、2018年からです。2019年には、取締役に就任しました。

NAGANO SPIRITの渡辺さん
市原

自分の仕事とは別にチームを手伝うのは、そうとう大変だったのではないかと思います。社員として関わるようになった背景には、どのような想いがあったのでしょうか。

渡辺さん

長くチームに関わるうちに、プロバスケットボールチームが会社として立ち上がり、大勢の方々を巻き込んでいくムーブメントを目の当たりにしてきました。その内側でみんなを引っ張っていく役割を担いたいと思ったことが入社の理由です。

市原

BIPROGYに所属する私と、信州ブレイブウォリアーズの渡辺さんの出会いについてご説明するとスポーツ庁による「地域版SOIP」という取り組みがきっかけでした。2022年のことです。

BIPROGYでは、企業共創の創出に力を入れるため「ConnectX」と名付けたプロジェクトグループを立ち上げました。「競争」よりも「共創」を重視することで、企業同士の“つながり”から持続可能性をともなった新しい価値が生まれると考えています。「ConnectX」ではスローガンとして「つながれば、社会は変えられる」と掲げていますが、これは私たちの本当の想いです。渡辺さんとは、スポーツの“つなぐ力”により共創による社会の変革にチャレンジしています。

※「地域版SOIP」:令和4年度スポーツ庁によるスポーツ産業の成長促進事業「スポーツオープンイノベーション推進事業(地域版SOIPの先進事例形成)」です。全国3地域にて実施しているアクセラレーションプログラム『 INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 』のうちの一つとして甲信越・北陸エリアに参画いたしました。SOIPは「Sports Open Innovation Platform」の略称で、スポーツ庁がスポーツオープンイノベーション推進事業として取り組んでいます。狙いは、スポーツ分野と他産業の融合により、新規事業の創出と社会課題の解決に置いており、2021年度から「全国版」と「地域版」がそれぞれスタートしています。

BIPROGYの市原

日本の“バスケ熱”が上昇中。
信州ブレイブウォリアーズの挑戦とは。

渡辺さん

Bリーグとは日本のプロバスケットボールリーグのことです。信州ブレイブウォリアーズがBリーグ1部(B1)に所属するようになってから3年が経過しました。最新シーズンが5月末に終わったばかりです。B1は東・中・西の3つの地区分けがされており、信州ブレイブウォリアーズは中地区に属しています。今回は地区3位の結果をおさめました。

ビジネスとしてチームの結果を振り返ると、まず入場者数は1試合平均2,879人でした。昨シーズンに比べると1,133人増えて、過去最高の伸び率を記録しました。新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきたことは背景のひとつとして考えられますが、なによりもバスケットボールの注目度の高まりが数字に表れています。さらに、1月22日の試合では、1日の観客動員数がクラブ史上最多の6,014人でした。順調に伸びる数字に私たちは自信を深めています。

さらに、信州ブレイブウォリアーズのファンクラブ会員数も予想を上回る結果に終わりました。今シーズンの会員数は4000人を目指していましたが、蓋を開けてみれば5000人を超えていました。想像以上にバスケットボールの人気が高まっていることを認識できました。

市原

現在のBリーグは、2026年に新B1リーグへの移行が予定されており、参入には厳しい条件があります。信州ブレイブウォリアーズは新B1リーグ参入に向けてどのような取り組みを進めておられるのでしょうか?

渡辺さん

新B1リーグの参入条件として主に、ホーム試合の1試合平均入場者数4000人、売上12億円、ホームアリーナの高機能化といった3点が課されています。これらの目標値を、10月に始まる2023-24のシーズンで達成しなければなりません。信州ブレイブウォリアーズは大勝負の時期を迎えています。

市原

渡辺さんから説明があったように、ファンを獲得しながらビジネスとして成立させることが新B1リーグから求められています。課された目標値を達成するうえでのカギとなるのが企業共創というわけです。

「応援」の気持ちが追い風に。
パーソナルデータを「健幸」に生かす。

市原

今回、企業共創のきっかけとなった「地域版SOIP」では、課題を持つスポーツチームと、解決策としての事業プランを持つスタートアップの2つの立場で構成されたアクセラレーションプログラムが催されました。信州ブレイブウォリアーズが掲げた課題は「プロバスケを日常に浸透させ『長野県(信州)全域』を健幸にする」というものでした。キーワードとなるのが長野市のビジョンにも含まれている「健幸」です。

地域版SOIP長野DEMODAÝの様子
市原

多くの提案の中から採択されたのが、生活者一人ひとりに最適な栄養が備わった食事を提案するAIアプリが軸となった事業プランです。カギとなるのがパーソナルデータの連携で、2023年の1月から2月にかけてファンと選手からの協力を受けて実証事業を行いました。

今回の実証事業の最大のポイントは「ブースターに喜んでもらえる形で『健幸』を追求できているか?」という問いにありました。結果として、ヘルスケアに対する一定の効果を数値で確認できただけでなく、“推し”のチームといっしょに頑張ることが「健幸」につながる健康習慣の継続に役立つとわかりました。これは大きな収穫でした。

渡辺さん

「健幸」というキーワードを長野市が掲げるようになってからしばらく経ちますが、「地域版SOIP」がきっかけでようやく実際の取り組みを進められました。プライバシーについて敏感になる風潮のなかでチームのためにファンがパーソナルデータを積極的に提出してくれたのは嬉しかったですね。「健幸」の追求についてファンからの賛同を確認できたと思います。

市原

ファンにとっては、パーソナルデータの連携が、ヘルスケアにつながるうえにチームの応援につながるから、ある種の“楽しみ”として参加してもらえたわけですね。

「チームの応援につながる」とは、パーソナルデータがスポンサーからの新しい収入源になる可能性があるからです。パーソナルデータを生かせばマーケティング精度の向上につながります。これまでの広告協賛に加えて、データを軸にした新しいビジネスモデルを展開できると思います。

渡辺さん

プロチームとスポンサーの関わり方の多くが現在は広告協賛に偏っています。ブースターとつながれるコミュニティの提供が、スポンサーとの新しい関わり方になるかもしれません。最近では、SDGsなど社会問題にコミットする企業は少なくありません。ファンのコミュニティにスポンサーが参加すれば、ともに社会を良い方向に推し進める仲間として共感を深めることもできると思います。

市原

信州ブレイブウォリアーズの今後を考えるうえで「共感」は重要です。

渡辺さん

今、信州ブレイブウォリアーズは新B1リーグ参入に向けて大一番の勝負のときです。そのために一丸となれるブースターの熱意も、実証事業への積極的な参加から再確認しました。

市原

信州ブレイブウォリアーズのブースターが培ってきたコミュティは共感が大切にされているからこそ、さまざまな事業者がいっしょに共創を進めていける余地が大きいと思います。協力に熱心な支援者たちと共感を育みながらいっしょにコミュニティを築き上げていくことが今回の実証事業の先にある展望です。

渡辺さん

これまでもブースタークラブ(ファンクラブ)といっしょに、地元に活力を生むため活動してきたことがベースにあります。これからはブースターだけでなく地域住民全体にも「健幸」を広めていきたいと思っています。

「本人同意」が広げる未来の可能性。
データ連携の基盤構築で大切なこと。

市原

活動の輪を広げていくうえでデータ連携を推し進める基盤が必要になります。そのひとつがBIPROGYの「Dot to Dot」です。データ連携の基盤を築いた先に、企業共創により新しいサービスを作っていこうとしています。

パーソナルデータの流通をすすめるときに大事にしたいポイントが、ブースターのみなさんから能動的にデータを「出すよ」と言っていただくことにあります。いわゆる「本人同意」が大事です。

本人同意を経ればこそ、真正性の高いパーソナルヘルスレコード(個人の医療・介護・健康に関する記録)を提供サービスにデータ連携できるだけでなく、生活者一人ひとりについて継続的な経過観察まで可能です。 本人同意により生活者のターゲット層を把握したうえで商品開発や販売促進を進めることもできます。さらにSDGsやESGなど事業者による社会課題解決に向けたコミットを、生活者を巻き込んだ共創により発展できる可能性があると思います。

渡辺さん

基礎となる技術としてはBIPROGYが良いものを持っており、いいサービスを築くために活用できればと思います。ただ、共創を進めるには事業者の数がまだまだ足りません。興味があれば一度お話をしましょう。もちろん、「すぐにビジネスをいっしょに考えましょう」と話をするには、みなさんの心のハードルが高いと思います。まずは「健幸」について共感を深めるところから始められたらと思います。

市原

今回は「スポーツの“つなぐ力”」から生まれようとしている共創についてトークセッションをお送りしました。スポーツを核としながら企業共創を基礎とする世界観をいっしょに作っていきましょう。

これが私たちからのメッセージです。

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